墨付け・刻み アンチプレカットの理由

van socia

2011年09月17日 05:56

「弥生町の家」の墨付け、刻みが始まっています。
施工は雅山建築(=わたしのだんなさん)です。



現在の住宅の大半は、
柱・梁などの構造材を工場でカットし、
現場で組立てて完成するのが主流です。
これをプレカット工法と言います。

本来の在来工法は、木材を見立てて
曲がり、歪みなどもチェックしながら
大工の手によって墨を付け、
付けた墨に沿って手で刻んでいきます。

現在のプレカット技術は良くなっているし、
何よりも工期短縮と予算を抑えるために
ほとんどがプレカットになってきています。

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今回の弥生町の家は、ローコスト住宅ということもあり
積算段階でプレカットも検討し、見積もりも出しました。

でも「これだけの金出して機械でやるなら
自分で刻むわ」ということになりました。
金額的にプレカットもたいして安いわけじゃないし
期間的にもどうせ基礎やるわけだし、といったところです。


わたしは設計事務所で勤務していたのですが
主人と結婚するまで「そんなん、プレカットでいいじゃん、
プレカットの技術だって遜色ないんでしょ」と思っていました。
一緒に仕事をするようになっても
「どっちでもいいんじゃないか」と思っていました。
主人がなんで手刻みにこだわるのかを聞いても
「ん~。俺の自己満足だなー。」くらいしか言わなかったので。。。

先日「なぜ主人の親方はプレカットに出さないのか」
という質問をしました。他の仕入れ単価には厳しいと
聞いていたからです。

「そりゃあ、大工を育てるためだと思うよ。
 プレカットに出して刻みしなくなったら圧倒的に
 手数が減る。頭働かせて、手を動かしてっていう
 機会がなくなると、構造材にしても、造作にしても
 メーカーから来たものを組み立てることしかできなくなる。

 特に増改築なんか、対応できない。刻まなくなると
 自分で考えて、刻んで、組み立てることが出来なくなる。
 手を動かすと、他への応用も考えられてくる。
 そうやってやってかないと、どんどん手が荒れて
 早くて汚い組立屋みたいな仕事しか出来なくなる。」


1棟1棟を刻みでやることで、大工の技術を維持・向上する
という視点がわたしにはありませんでした。
結局わたしは設計図という「絵」を描くだけで
実際に形にするのは大工さんはじめ職人さんなのだという
根本的なことがすっぽりと抜け落ちていたわけです。



近年全盛の「長期優良住宅」。
国交省の基本方針:ストック重視の住宅政策に転換し、
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」
社会へ移行すること。

だけど。
住宅だけ長生きしても、それを修繕・改修する大工の技術が
生き延びていなければ、結局長生き出来ないのでは・・・


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日本の住宅特有の木の美しさ、佇まいを活かした
設計をもっと勉強していきたいなあ、と思います。
もっともっと頑張らねば。うー・・・





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