2011年09月17日
墨付け・刻み アンチプレカットの理由
「弥生町の家」の墨付け、刻みが始まっています。
施工は雅山建築(=わたしのだんなさん)です。

現在の住宅の大半は、
柱・梁などの構造材を工場でカットし、
現場で組立てて完成するのが主流です。
これをプレカット工法と言います。
本来の在来工法は、木材を見立てて
曲がり、歪みなどもチェックしながら
大工の手によって墨を付け、
付けた墨に沿って手で刻んでいきます。
現在のプレカット技術は良くなっているし、
何よりも工期短縮と予算を抑えるために
ほとんどがプレカットになってきています。
・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の弥生町の家は、ローコスト住宅ということもあり
積算段階でプレカットも検討し、見積もりも出しました。
でも「これだけの金出して機械でやるなら
自分で刻むわ」ということになりました。
金額的にプレカットもたいして安いわけじゃないし
期間的にもどうせ基礎やるわけだし、といったところです。
わたしは設計事務所で勤務していたのですが
主人と結婚するまで「そんなん、プレカットでいいじゃん、
プレカットの技術だって遜色ないんでしょ」と思っていました。
一緒に仕事をするようになっても
「どっちでもいいんじゃないか」と思っていました。
主人がなんで手刻みにこだわるのかを聞いても
「ん~。俺の自己満足だなー。」くらいしか言わなかったので。。。
先日「なぜ主人の親方はプレカットに出さないのか」
という質問をしました。他の仕入れ単価には厳しいと
聞いていたからです。
「そりゃあ、大工を育てるためだと思うよ。
プレカットに出して刻みしなくなったら圧倒的に
手数が減る。頭働かせて、手を動かしてっていう
機会がなくなると、構造材にしても、造作にしても
メーカーから来たものを組み立てることしかできなくなる。
特に増改築なんか、対応できない。刻まなくなると
自分で考えて、刻んで、組み立てることが出来なくなる。
手を動かすと、他への応用も考えられてくる。
そうやってやってかないと、どんどん手が荒れて
早くて汚い組立屋みたいな仕事しか出来なくなる。」
1棟1棟を刻みでやることで、大工の技術を維持・向上する
という視点がわたしにはありませんでした。
結局わたしは設計図という「絵」を描くだけで
実際に形にするのは大工さんはじめ職人さんなのだという
根本的なことがすっぽりと抜け落ちていたわけです。
近年全盛の「長期優良住宅」。
国交省の基本方針:ストック重視の住宅政策に転換し、
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」
社会へ移行すること。
だけど。
住宅だけ長生きしても、それを修繕・改修する大工の技術が
生き延びていなければ、結局長生き出来ないのでは・・・
・・・・・・・・・・・・・
日本の住宅特有の木の美しさ、佇まいを活かした
設計をもっと勉強していきたいなあ、と思います。
もっともっと頑張らねば。うー・・・

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施工は雅山建築(=わたしのだんなさん)です。
現在の住宅の大半は、
柱・梁などの構造材を工場でカットし、
現場で組立てて完成するのが主流です。
これをプレカット工法と言います。
本来の在来工法は、木材を見立てて
曲がり、歪みなどもチェックしながら
大工の手によって墨を付け、
付けた墨に沿って手で刻んでいきます。
現在のプレカット技術は良くなっているし、
何よりも工期短縮と予算を抑えるために
ほとんどがプレカットになってきています。
・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の弥生町の家は、ローコスト住宅ということもあり
積算段階でプレカットも検討し、見積もりも出しました。
でも「これだけの金出して機械でやるなら
自分で刻むわ」ということになりました。
金額的にプレカットもたいして安いわけじゃないし
期間的にもどうせ基礎やるわけだし、といったところです。
わたしは設計事務所で勤務していたのですが
主人と結婚するまで「そんなん、プレカットでいいじゃん、
プレカットの技術だって遜色ないんでしょ」と思っていました。
一緒に仕事をするようになっても
「どっちでもいいんじゃないか」と思っていました。
主人がなんで手刻みにこだわるのかを聞いても
「ん~。俺の自己満足だなー。」くらいしか言わなかったので。。。
先日「なぜ主人の親方はプレカットに出さないのか」
という質問をしました。他の仕入れ単価には厳しいと
聞いていたからです。
「そりゃあ、大工を育てるためだと思うよ。
プレカットに出して刻みしなくなったら圧倒的に
手数が減る。頭働かせて、手を動かしてっていう
機会がなくなると、構造材にしても、造作にしても
メーカーから来たものを組み立てることしかできなくなる。
特に増改築なんか、対応できない。刻まなくなると
自分で考えて、刻んで、組み立てることが出来なくなる。
手を動かすと、他への応用も考えられてくる。
そうやってやってかないと、どんどん手が荒れて
早くて汚い組立屋みたいな仕事しか出来なくなる。」
1棟1棟を刻みでやることで、大工の技術を維持・向上する
という視点がわたしにはありませんでした。
結局わたしは設計図という「絵」を描くだけで
実際に形にするのは大工さんはじめ職人さんなのだという
根本的なことがすっぽりと抜け落ちていたわけです。
近年全盛の「長期優良住宅」。
国交省の基本方針:ストック重視の住宅政策に転換し、
「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」
社会へ移行すること。
だけど。
住宅だけ長生きしても、それを修繕・改修する大工の技術が
生き延びていなければ、結局長生き出来ないのでは・・・
・・・・・・・・・・・・・
日本の住宅特有の木の美しさ、佇まいを活かした
設計をもっと勉強していきたいなあ、と思います。
もっともっと頑張らねば。うー・・・

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Posted by van socia at 05:56│Comments(5)
│しごと
この記事へのコメント
おはようございます。昔から思うだん 足でスコッて入る継ぎ手のプレカット
十年 二十年 三十年って持つだかねぇ
あと集成材 こいつもノリんはがれりゃぁアウトのような気がしてならん ゆき~でです(∋_∈)
威勢んいいカケヤの音があぁ建て前だなぁってね!
十年 二十年 三十年って持つだかねぇ
あと集成材 こいつもノリんはがれりゃぁアウトのような気がしてならん ゆき~でです(∋_∈)
威勢んいいカケヤの音があぁ建て前だなぁってね!
Posted by ゆき~で at 2011年09月17日 07:52
お仕事がかり上、たくさんの住宅を拝見しますが、
国の政策にのっとって作っていても
“は?どこが長期で優良なの???”的ナもの
多くミカケマスョね、残念ながら。
“作る”“人”を育てるのはこれからのこの国の
大命題ではないかと思っています。
私の勤めていた会社の大ボスの現場所長が
“最近の若い子は・・・”的な話がでたところで
私達中堅社員にひとこと、“お前らが若いやつらに
きちんと作ることが楽しさをおしえねーからだろ?”と。
“そんなもん、楽しくなきゃ誰も一生懸命やんえねーよ”と。
目指すところに多様性がなくなったら
いろんな意味で衰退してしまいますものね。
大儲けに繋がらなくてもがんばりましょう!
長文ですみません
国の政策にのっとって作っていても
“は?どこが長期で優良なの???”的ナもの
多くミカケマスョね、残念ながら。
“作る”“人”を育てるのはこれからのこの国の
大命題ではないかと思っています。
私の勤めていた会社の大ボスの現場所長が
“最近の若い子は・・・”的な話がでたところで
私達中堅社員にひとこと、“お前らが若いやつらに
きちんと作ることが楽しさをおしえねーからだろ?”と。
“そんなもん、楽しくなきゃ誰も一生懸命やんえねーよ”と。
目指すところに多様性がなくなったら
いろんな意味で衰退してしまいますものね。
大儲けに繋がらなくてもがんばりましょう!
長文ですみません
Posted by accom at 2011年09月17日 10:31
ゆき~でさま
んーそうですねえ、木と木との召し合わせだけじゃなく
金物で強度を担保するのが前提になったことも
プレカット主流を後押ししたのかもしれませんね。。。
集成材も、どうかなぁと思いますね。特に昔のヤツは(>_<)
やっぱりカケヤの音と掛け声でテンションUP!!!
accomさま
安藤忠雄は、しょっちゅう現場に足を運んで
職人さんに建物への思いやディティールの意味や
なぜそうしてほしいかを語りまくるそうです・・・
「は?」と思いながらも「そ、そんなに言うなら。。。」
って熱意に負けるんだろうなぁ。。。みたいな。
作る楽しさを、後輩にもお客さんにも伝わるように
きちんと一生懸命に楽しく!
いいね!大事だね!大ボス?例の伝説の方ですか?
大儲けは無理だと思うけど・・・がんばろうね~
んーそうですねえ、木と木との召し合わせだけじゃなく
金物で強度を担保するのが前提になったことも
プレカット主流を後押ししたのかもしれませんね。。。
集成材も、どうかなぁと思いますね。特に昔のヤツは(>_<)
やっぱりカケヤの音と掛け声でテンションUP!!!
accomさま
安藤忠雄は、しょっちゅう現場に足を運んで
職人さんに建物への思いやディティールの意味や
なぜそうしてほしいかを語りまくるそうです・・・
「は?」と思いながらも「そ、そんなに言うなら。。。」
って熱意に負けるんだろうなぁ。。。みたいな。
作る楽しさを、後輩にもお客さんにも伝わるように
きちんと一生懸命に楽しく!
いいね!大事だね!大ボス?例の伝説の方ですか?
大儲けは無理だと思うけど・・・がんばろうね~
Posted by COCOON at 2011年09月18日 05:23
そう、あの、伝説の方です^^
現場の職人さんたちからよく言われたのは
建物の完成を見る機会がないよ、と。
そう、自分の専門分野が終わると次々現場を移るから
竣工時に見られるのは仕上げ職だけ、みたいな。
そーゆーところも現場で話をするまで
よくよく気づかなかった点です。
それからは、どーでもいいよ、と思われても
完了の時にはそれぞれの職種のかたにお電話をし、
客先からの喜びの言葉と一緒に
ありがとうを伝えることにしています☆
よかったら通りがかりにでも完成を見てね、と。
現場の職人さんたちからよく言われたのは
建物の完成を見る機会がないよ、と。
そう、自分の専門分野が終わると次々現場を移るから
竣工時に見られるのは仕上げ職だけ、みたいな。
そーゆーところも現場で話をするまで
よくよく気づかなかった点です。
それからは、どーでもいいよ、と思われても
完了の時にはそれぞれの職種のかたにお電話をし、
客先からの喜びの言葉と一緒に
ありがとうを伝えることにしています☆
よかったら通りがかりにでも完成を見てね、と。
Posted by accom at 2011年09月18日 07:49
accomちゃん
>完了の時にはそれぞれの職種のかたにお電話をし、
客先からの喜びの言葉と一緒に
ありがとうを伝えることにしています☆
さすが!良いお仕事してますね!
またaccomちゃんのお仕事見させてねー(^ー^)
>完了の時にはそれぞれの職種のかたにお電話をし、
客先からの喜びの言葉と一緒に
ありがとうを伝えることにしています☆
さすが!良いお仕事してますね!
またaccomちゃんのお仕事見させてねー(^ー^)
Posted by COCOON at 2011年09月19日 05:23